痔(内痔核)にジオンという薬を注射して治す治療方法があります。ALTA(アルタ)療法 あるいは四段階硬化療法と呼ばれるものです。従来の注射薬に比べて治療効果が高く、痔 を硬化させて小さくし、速やかに止血効果が得られるものとして痔の専門病院で積極的に 導入されています。切除手術に比べ痛みや合併症が少なく、日帰りや一泊入院での治療が可能です。すべての痔に対応できるものではありませんので診察により適応があるか判断 が必要になります。この治療は専門的な技術を要するため資格を有した専門医のいる施設 でないと受けることができません。当院では15年以上ALTA治療を行ってきた専門医が対応 いたしますので安心してご相談ください。
痔は比較的身近な病気で昔からよく知られた病気です。そのため、いぼ痔、あな痔、切れ痔などの俗祢で呼ばれたりすることもあります。身近であるがゆえに、きちんと治療を受けず自己流の治療を続けたため重症となって受診される方も少なくありません。また、肛門からの出血があっても痔のせいだと思い込んで放置していたら、実は大腸がんや腸の病気であったということもありますので注意が必要です。肛門の病気は痔をはじめ多数のものがあり、肛門機能に関するものや肛門皮膚の病気など広範囲に及びます。今回はその中 でも生活習慣に関連した肛門の病気として痔核、痔瘻、裂肛についてお話ししたいと思い ます。
肛門は括約筋とその隙間を埋めるクッション構造によって漏れがないように閉じられています。このクッション構造は動静脈血管や平滑筋、結合組織と呼ばれる支持組織からでき ています。これらの支持組織が痛むことで痔核、痔瘻、裂肛といった病気になるのです。痔核はこのクッション構造が弱くなって脱出し、うつ血などで腫れて痛んだり出血するようになったものです。裂肛は便秘や下痢などによって肛門が切れて傷になったもので、時には感染によって慢性化したりポリープができたりすることもあります。痔瘻は痔核や裂肛 などに感染を伴うことで膿瘍(膿のたまり)をつくり直腸や肛門と交通したトンネルをつくったものです。
これまでの説明で肛門のクッション構造が痛んだり、感染することで病気になることがお分かりいただけたかと思います。ではなぜそのようなことになるのでしょうか?一番の原因は下痢や便秘といった排便習慣の乱れによって肛門に負担がかかることで肛門のクッション構造が痛んでしまうことです。その他にも肛門のクッション構造に負担がかかるものとしてうつ血があります。日常生活でじっと立っていたり座っている時間が長いと、肛門は心臓より下にあるため、どうしてもうつ血しやすくなります。またトイレに座っている時間が長かったり、強くいきむ習慣のある方も肛門には大きな負担がかかっています。排便後の温水洗浄は肛門を 清潔に保つのには有効ですが、その後こするように拭いてしまうと肛門を痛めやすいです。こすらずに抑えるようにして水分を拭き取りましょう。また、食生活の乱れは、便秘や下痢を引き起こす原因になります。アルコールや香辛料の取りすぎは、肛門のうつ血などを起こすことがあり、下痢の原因にもなるので注意が必要です。また、食物繊維が不足すると便秘しがちになり肛門に負担がかかってしまいます。そのほか疲労やストレス、体の冷えなども、全身の血行を悪くしうつ血から肛門に 負担が力、かるといわれています。こういった生活習慣からくる肛門への負担があるために、痔をはじめとした肛門疾患が生活習慣病として考えられている理由です。
肛門の病気が生活習慣と密接に関連していることがお分かりいただけたかと思います。これは痔をはじめとした肛門の病気の予防だけでなく、治療中の養生としても、治療後に再発させないためにも重要なことです。どんなによい治療を受けられても、その後の養生が悪く、生活習慣の改善がなければ再発してしまうことも少なくありません。また、生活習慣を見直して改善につなげることは肛門の疾患だけでなく肥満や糖尿病、高血圧、高脂血 症、脳卒中、心臓病、癌などの他の生活習慣病の予防にもつながります。
治療の方針として、まずは排便習慣をはじめとした生活習慣の確認と改善を指導させていただきます。痛みや腫れが強い、出血があるなどの場合には病状に応じた治療が必要になります。軽症の場合は注入軟膏や座薬を処方することもあります。より症状が重くなってくると、痔核の場合はALTA療法と呼ばれる硬化剤の注射療法や結紮術、切除術などがあり ます。痔瘻は膿瘍、トンネル部の切開開放や肛門機能温存を考慮した手術方法が選択され ます。裂肛は大半が急性のもので排便コントロールと外用薬が主体になりますが、慢性化 すると手術が必要になることもあります。そしてこれまでにご説明しましたように治療後は排便習慣をはじめとした生活習慣の改善が重要となります。
体の健康はおしりからを合言葉に、さっそく今日から生活改善、快便習慣に取り組んでみましょう!